レポートfrom U.S.A
Akiba
 シアトルからデンバーに向かうユナイテッド航空の搭乗口で私の名前がコールされた。何事かと思ってカウンターに行くと、どういうわけか「もっとよい席に換えてあげましょう」と。新しく渡されたボーディングパスはビジネスクラスの窓際の席だった。隣の席に大柄の、目鼻立ちのはっきりしたハンサムな男性が座った。離陸間際まで携帯電話で話をしている。どうやら有名人らしいが私にはよくわからない。しばらくして彼がバッグから取り出した本のカバーをちらりと見ると、「イメリル−アメリカ一の人気シェフの秘話」とある。写真の人物は彼によく似ている。もしかして、この人は有名シェフなのかな……。
 デンバーからローカル空港シェリダンまでプロペラ機で飛び、今ワイオミング州、ビッグホーン山脈の一端、標高1,600mの高地に位置するキャンプ施設にいます。昼間の陽射しは強いけれど、湿度が低く吹く風も爽やか。
 ここに今13歳から18歳までのティーンエイジャーたち20人がアメリカ各地から集まって、アートキャンプを体験しています。私はこのキャンプのプログラムを調査、レポートする目的でここに滞在しているのです。
 キャンプの食事は自炊ではなく、専用の大きなキッチンがあって、三食付き。といっても出来合いの簡単なものだろうと想像したら、専任のコックがいて、とってもデリシャスなアメリカ家庭料理を作ってくれる。ハンバーグもフライドチキンもピザも全部手作りでおいしい。おかげでこれまで一度も食べ残したことがない。
 コックはマシュー君というミルウォーキーからやってきた23歳の大学生で、アメリカのテレビドラマから飛び出したようなキュートなルックス。料理は子供の頃からお母さんの手伝いで覚え、レストランの調理場で働いた経験もあるとか。彼がほとんど一人でキャンパーとスタッフ合計30人以上の食事をまかなっている。机の上には料理本や料理雑誌が積まれ、棚には何十種類もの調味料やスパイスが。
 彼に「イメリルってシェフ、知ってる?」と聞くと、テレビで派手な料理ショー番組をもっている人気シェフだとか。「ここにいる他の誰かに聞いてみるといいよ。みんな知ってるから」。やっぱりそうか、サインでももらえばよかった……。
 機上で“アメリカ一の人気シェフ”に会ったと思ったら、ワイオミングのキャンプ場では“無名のクールなシェフ”に会えた。今さらながら、宿泊施設の料理の大切さを感じています。
 近くの町のマーケットで味噌が調達できたら、大鍋にだご汁を作ってみんなにふるまおうと思っています。

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