星のふるさとだより
Akiba
 星野村に住んで、まもなく2年半。感想を聞かれるたびに言うのは、「まずいお茶がよくわかるようになりました」。
 ありふれた、珍しくないことを意味する日常茶飯事という言葉があります。お茶を飲み、ご飯を食べることは別段珍しくもない当たり前のこと。その言葉どおり、これまでなんとなくお茶を飲んできました。ところがお茶って、茶葉の善し悪しだけでなく、入れ方次第でものすごく味が違うんですね。たかがお茶、されどお茶。星野村では良いお茶をおいしく入れて出される機会が多く、世の中、まずいお茶がいかに多いかを認識することになりました。飲食店や訪問先で薄いお茶や熱々のお茶をいただくと、もうちょっと気を遣って入れてほしい、お茶っ葉がかわいそう、と思ってしまいます。
先日、星野村で「第1回玉露のうまい淹れ方コンテスト」がありました。私はこのコンテストの実行委員の一人だったのですが、コンテストが成り立つほど差が出るんだろうか、と最初は半信半疑でした。ところが、予行演習をするうち、同じ玉露なのに、水色も口当たりも、あと味も、入れ方で全然違うことがわかりました。コンテスト本番には村内、村外から腕に自信のある人、ない人100人が参加。選手は真剣な表情で急須を振り、ギャラリーも皆の手つきを凝視する。大いに盛り上がった大会でした。実は私も出場したのですが、1回戦敗退。ちょっと茶葉の量が少なかったかな。
 玉露はお茶というより、“ギョクロ”と呼ぶしかない! 茶葉の量、お湯の温度と量、浸出時間、上手に入れた玉露はトロリと甘く、普通のお茶とは全く別物の味がします。玉露に多く含まれているテアニンというアミノ酸がその旨味の正体。星野村の茶の文化館では、テアニンの旨味を最高に引き出す「しずく茶」という飲み方で星野の伝統本玉露を呈茶しています。ギョクロの生産は手間暇かかるため年々減少していて、このままでは絶滅が危惧されます。おいしく入れた玉露の魔力が広まれば、もっと消費が増え、生産にも弾みがつくのでは…茶の文化館でしずく茶の最初の一すすりに目を丸くするお客様の顔を見るたび、その思いを強くしています。

戻る