子育てサークル

 
グリーントマトの子育て日記
星の王子様

 中学の頃に読んだ『星の王子様』を、十数年ぶりに劇で見た。
――羊が一輪のバラの花を食べようと、大人達には問題ではない――その言葉の意味を、大人になっている今再び考えた。どこにでも咲くバラの花。けれど、王子が自分の星に咲く一輪のバラを愛おしく思うのは、王子がそのバラに毎日水をあげて育てたから。どこにでも咲いているようで、その人にとってはたった一輪しかない一番の花。大人にはその花がなかなか見えないのかもしれない。――大切なものは目には見えない――この言葉が重く残る。
 娘が石を拾ってきた。石というよりガラスの破片が削れたもので光った石のように見える。娘は「宝石を見つけた!」と、喜んで見せてくれた。あまりに嬉しくて、学校へ持っていって先生に見せるという。次の日、さっそくそれを見せに行ったが持って帰ってこなかった。「先生!ほら!きれいでしょ」と言って手渡したのを、先生はもらったのと勘違いして「ありがとう。飾っとくね」と、そのまま持って帰ってしまったという。娘は先生が嬉しそうだったので、返してと、言えなかったそうだ。
 それから数ヶ月後の年度の終わり、担任の先生ともお別れしなければならない。娘はずっと気になっていた宝石のことを、私も手伝いながらとうとう勇気を出して先生に言った。すでに先生はどこへやったか覚えておらず、数日後、「ごめんね」と言って代わりにきれいな色をした石を三つ、わざわざお店で買ってきて娘にくれた。私は先生を気の毒に思いながら、娘の様子を見ていた。
 娘は家に帰って、もらった石を三つ並べ、「これ大きいなあ」と、つぶやく。「これもきれいね」と、私が言うと、「『もしあれが見つかったら先生が大切に持っとくね』って言われた。もう二度と宝石は戻ってこないよ。私が見つけたのはこんなに大きくない。小さくてキラキラ光ってたもん。あの宝石を拾ったことは奇跡やもん。」と、泣き出した。大人からすればどこにでもあるガラスの破片。決して大きくなくても、きれいな色でなくても、この子にとってはこの世でたった一つの宝石なのだ。
――羊が一輪のバラの花を食べようと、大人達には問題ではない――
――砂漠が美しく見えるのは、そのどこかに井戸を隠しているから。夜空が美しく見えるのは、そのどこかに王子が今もバラと暮らしているから――
――大切なものは目には見えない――
そんな台詞が胸を突く。娘の宝石は私達大人には見えないのかもしれない。その宝石がどんなに美しく、どんな輝きを放っていたのかも……。

                              (志穂)



戻る