子育てサークル

 
グリーントマトの子育て日記
台所の向こうにアジアの国々を見た

 オリーブオイル、コーヒー豆、ネグロスバナナ、エコシュリンプ(エビ)、マスコバド糖……なるべく安いものがいいと、わずか何円の違いにこだわって少しでも安いものを選ぶ私。主婦なら誰もが心当たりのある行為だ。ところがある日、生協の集会に生産者がやってきた。パキスタン、東ティモール、フィリッピン……海を渡って、遠い国からはるばるやってきたのだ。彼らはどうやって、どんな思いで作物を育てているのかを私達に説明してくれた。
 スライドに映った光景は、パレスチナの境界近くでイスラエル政府から伐採されようとするオリーブの木を子どもから女性、お年寄りまでもが体を張って守る姿。こうして一粒一粒のオリーブの実がやっとの思いで収穫されている。政治的背景のしわ寄せを受けながら、オリーブの木を育てることが生活の全てであり生活の糧である彼らの一生懸命な姿だった。次々にある報告……インドネシア政府の方針転換により破壊されていくマングローブ林を、必死に守ろうとする地元エビ生産者達の努力。事態は環境問題にまで及んでいる。パプアニューギニアではカカオなどの農作物を市場に運ぶトラックが足りず、何キロも離れた農村から苦労して運ぶ女性達。インドネシア軍に占領された歴史を持つ東ティモールの、今も貧困に苦しみながらコーヒー栽培に昼夜を捧げる生産者達。
 さらに、スライドにゴミ山を歩く少年の姿が映る。うちの子と同じぐらい12歳ぐらいかな。ゴミ山でお金になりそうなものを拾うのが彼の仕事。下水設備、道路、病院、学校もないパキスタンの地域で子ども達は児童労働、女中奉公が当たり前なのだ。そこへ、生協が私達から集めた古着を送り続け、その資金で少しずつ子ども達は教育を受ける事ができつつあるという。
 どれもこれも女性差別、南北差別などを背景に貧困の中必死に生きる生産者の姿だった。うちの子ども達は当たり前のように学校に行き、食べきれなかったら給食を残し、暖かい家でテレビでも見ながら気楽に生活している。そして私はといえば、何円高いと言いながらそんなアジアの人々が育てた作物を拒んでせかせかと夕食を作っているのだ。何てことだろう!6畳の団地の小さな台所の向こうに急にアジアの国々が広がった。私達が作物を注文することで彼らの生活は豊かになり、彼らが届けてくれることで私達は丹精込めた作物の本物の味を得ることができる。「同じアジア人として今こそ一体となって支えあおう」そんな言葉で締めくくられた思いもよらない世界規模の生協の報告集会に、狭い台所で値段ばかりを気にしていた今までの私がすっかり小さい人間に見えたのだった。

                              (志穂)



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