 |
グリーントマトの子育て日記
へそのゴマ
|
 |
子どもの頃、おばあちゃんから言われていた。「へそのゴマを取ったらお腹が痛くなるよ」と。私はすっかりそれを信じ、42歳になるまでへそのゴマを取ったことがなかった。そりゃ少しは気になり、ちょっと一粒ばかり取ろうとしたこともある。でも、なぜかそうしようとすると、お腹がチクリと痛むような気がするのだ。「いかん、いかん。おばあちゃんの言う通り、取らんようにしとこう」そう思いとどまって、42歳まできた。別段これまで誰も私のへそのゴマに対してとやかく言う者もいなかった。
へそといえば、修学旅行の時なんかは船酔いをしないようにと、これもおばあちゃんに言われて、へそに梅干をテープで貼って行った。実際、船に酔うこともなく助かったのだが、夜、皆でお風呂に入る時になって困った。一人こっそり隠れてはがしたのを覚えている。
そんな事もあった私のへそ。42年間のゴマがたっぷりと埋まっていた。
ある日、友人が私のへそを見て驚いた。「何これ?もしかしてゴマ?」と、興味深げに覗くではないか。友人はこんなにたくさんゴマが詰まったへそは見たことないと笑い転げた。
私は不思議だった。だって、おばあちゃんの話では、へそのゴマを取るとお腹が痛くなるのだから誰もが当然取っていないものと思っていたからだ。
「へそのゴマって取るものなの?」私は生まれて初めてその事を知った。カルチャーショックだった。私だけがへその情報から取り残されていたのだ。触らずそっと大事にしすぎたへその穴の中。そういえば妊娠した時、ぱーんと張ったお腹はへその穴がなくなりかけ、同時にへそから黒い物が出てきた。私はそれは、赤ちゃんの時に切ったへその緒が残っていたのだとばかり思っていたが、今考えると、それはへそのゴマだったのだ。
友人は愉快な実験でもするかのように、ニタニタしながら綿棒をオイルでぬらしてへそを触った。すると、親指ほどのでっかい丸い黒いものが綿棒に付いてきた。またまた驚いた。おばあちゃんがあんなに言っていた禁断のへそのゴマは、こんなに簡単に取れるものだったのか。しかもお腹はいっこうに痛くならない。騙された!この年になるまで。
私はその友人と出会わなければ、一生ゴマを取らなかったに違いない。私ばかりか、我が子にもおばあちゃんから言われた通りに伝えていた私は、子どものへそをもゴマで真っ黒にするところだった。
それにしても、なぜ、あんな事をおばあちゃんから言われたのだろう。へそを扱っていた私への、お腹を大事にするようにというおばあちゃんの優しさかもしれない。今頃、おばあちゃんは天国でニタッと笑っていることだろう。
(志穂)