子育てサークル

 
グリーントマトの子育て日記
桃の記憶

 「うわー!桃だ!」
珍しそうに桃を眺める子ども達。
今年は桃をたくさん頂いた。今まで給食で切った桃は食べていても、丸ごとの桃はめったに見たことない7歳の娘。「お尻みたい!」「いい匂い!」とはしゃぎながら、「ね、どうやって剥く?」「かぶりついていい?」と、食べる気満々の10歳の息子。「ママが子どもの時は家に桃の木があって、学校から帰ったら取ってかぶりつきよったよ」と話すと、「いいなー」と、二人とも目を丸くした。
 その桃の木がまだ庭にあった頃のこと・・・。私は朝から夜遅くまで編集社で働く27歳。久しぶりの休みに当時付きあっていた彼の家に遊びに行こうとしたら、祖母が「桃食べんね?」ってもぎたての桃を持ってきてくれた。急いでいた私は、その桃を彼におみやげに持っていった。一人暮らしの彼は、「うわー!桃なんて久しぶり!」と、想像以上に喜んだのを覚えている。彼のアパートの周りは田植えを終えた苗が青々と成長していて、その風景を眺めながらのんびり一緒に桃を食べた夏の日・・・。
今、その甘酸っぱい思い出が口の中に広がった。思えば庭の桃の木の記憶はそれが最後。祖母はその1ヵ月後に事故で亡くなった。桃の木を世話する人もいなくて、そのうち私が気づいた時には桃の木はなくなっていた。彼ともその年の冬に別れた。10年以上経った今では、彼が居たアパートの周りは田んぼがあったのが嘘のように大きな道路が走り、マンションが立ち並んでいる。
 おばあちゃんも、当時の彼も、二人で眺めた田んぼの風景も、庭の桃の木も今は消えてしまったけれど、ママにはこんな素敵な思い出があるのよ。そして、目の前には・・・桃を見て喜んでいるかわいいあなた達がいるのよと、桃を食べながら心の中でつぶやき嬉しくなった。
                                     (志穂)


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