子育てサークル

 
グリーントマトの子育て日記
おまえでよし

 保育所の保護者研修での子育て講演会。講演が始まる前、席に座った私は九州中央病院精神科部長という講師のプロフィールを見ながら、「私ね、家で子どもと一緒に居る時、イライラして頭がキーッ!となってしまうと。精神的にどうかあるとやないやろうかと思う」と、隣の友人に話していた。
 すると、講演が始まり不思議にもそのまんまの話が講師の野見山先生の口から飛び出した。
 「子どもと一緒に居たら、どの親だってイライラしてくることはあるんです。そんな時、自分が精神的にどうかあるとやないやろうかと思う人の方が問題。思い詰めないように……」。
 ホッと救われた気がした。
 さらに驚いたのは、「今のお母さん達は、昔に比べたら子どもの数も少なくて自由で楽と見られがち。一見そう見えても、回りの評価や顔色に縛られビクビクしている」と、先生がまるで見すかしたかのように言われたことだ。実際に両親や親戚、よその家に子連れで出かける時、当然かもしれないが子どもの姿を見て親の育て方を評価される。やはり気になる。どこかに親の見栄みたいなものがあって、こういう子にしなければ……という気持ちで一杯になる。何でもできる子に……とどこかで望んでいる。「そんな親の期待を受けて今の子どもは不自由だ。一人の子にかかる心の負担は大きい」と、先生は話す。「欠点も弱点もその子の中にあるものを認め、一人の命を認めてあげる。『おまえでよし』そう思うことが大切」と言われた。考えてみれば、わが子がそこに生きている、それだけで嬉しいことなのに、私はいつの間にかそんな大事なことを忘れてしまっていた。
 『おまえでよし』という言葉は、私達親にも投げられた。
 「今の母親は子どもと一日家に居ると息が詰まるとか、わがままやね!子育てそっちのけで仕事や自分の好きなことばっかりやって。私達は映画見るのも我慢して子育てしてきたよ」と、ついこの前も義母に言われた私だが、この日は先生に「自分というものをなくしてお母さんはできません。よい母親であろうとするなら、まず自分を取り戻すこと」と、全く正反対のことを言われた。「心の中で子育てがイヤだと思う自分を、いけないんだと責めなくていい。心で思うことは自由。心の中まで良い人である必要はない」と……。私自身、よい母親ではない自分に引け目や劣等感を感じたり、育て方を他人と比べたりしているところがある。夫を会社に取られた生活の中で、子どものできの善し悪しは自分次第で決まってしまうと気負っているかもしれない。
 そんな私達に、先生は言われた。
 「母親も、自分が誰かに抱えられていないと子どもを抱えきらないんですよ。弱点もある相変わらずのあなたでいいんです。『おまえでよし』」
 ふっと楽になって涙がこぼれた。『おまえでよし』と、いつも自分の胸につぶやきながら、そして、この言葉を子どもへのまなざしとして生きていきたい。

(志穂)



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